文庫本「本性」
OTHER
2020.12.15 RELEASE
講談社文庫「本性」刊行(著/黒木渚)
¥700(税抜)/ 240ページ / A6
ISBN:978-4-06-520167-1
<本人コメント>
人は腹の底に井戸を持っています。
井戸の中には、過去のガラクタや、行き場を無くした感情、たくさんの嘘、消化しきれなかった思い出なんかがギッシリ詰まっていて、普段は重い蓋が乗っかっているのです。
他人に見せることは絶対にない井戸の中身。私は人の井戸を覗きたくてうずうずしてしまいます。ちょっとした言葉や行動から、その人の本性を紐解いてゆくのは、探偵ごっこのようで楽しい作業です。
「本性」に登場する人々は、私の探偵ごっこの標的になってしまいました。その結果、本当は隠しておきたい部分も何もかも露わになって、業やら、罪やら、性やら、とにかく恥ずかしい部分丸出しのまま晒されてしまってます。
今回、文庫化にあたって初めて「あとがき」なるものを書きました。けれど、なんだか作品の説明をする気にはなれず、結果的に物語の登場人物に「あとがき」を任せてしまいました。本性の世界に私が引き摺り込まれたあとがきは、もしかすると「あとがき」ではなく第4章なのかもしれません。
黒木渚